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【談話】2005/09/27 
『大阪の障害児学校等調整額廃止を許さぬとりくみを全国ですすめよう』

2005年 9月27日 全日本教職員組合 障教部部長 杉浦 洋一

 9月21日、大阪府教育委員会は、大教組などに対し「盲学校、聾学校、養護学校、小学校及び中学校の教職員に対する給料の調整額の廃止」を提案した。平成18年度現行調整基本額の2分の1を減じる経過措置の後、平成19年度から全廃する内容である。
 
 そもそも調整額は「職務の複雑、困難若しくは責任の度合又は勤務の強度、勤務時間、勤務環境その他の勤務条件」が著しく特殊な職員に支給されているものである。
 
 重い障害のある児童生徒のたんの吸引など一部の医療行為を、盲・ろう・養護学校の教員にも認める厚労省決定(2004年10月)など、障害の重度・重複化の中で障害児学校教職員に求められる専門性・特殊性は一層増大している。障害児学校では教職員の腰痛・頸肩腕障害、妊娠障害などの罹患が常態化している。発達段階や障害を異にする子どもたちの個に応じた教育計画・教材作成、複数の教職員による授業実践に必要な打ち合わせなど日常的な超過勤務、深夜の勤務を余儀なくされる寄宿舎指導員の職務、重度障害児や他害・自傷行為などの子どもたちの指導における生命・安全に直結する常時継続的な緊張状態、学級数に対応する教室数さえ確保されていない教育環境、…日本の障害児学校には「職務の複雑、困難、責任、勤務の強度、勤務時間、勤務環境」などの著しい特殊性を示す事例に事欠かない。
 
 障害児学級においても、全国的に重度・重複化、障害の多様化がすすんでいる。本来、障害児学校より軽度の障害児を対象とし、障害種別毎に設置されることが制度上の前提であるにもかかわらず、障害種別も年齢も発達段階も異なり、重度障害児をも含む最大8名もの子どもたちの指導をたった一人の担任の努力に求められている地域さえ今なお多く見られる。
 
 さらに現在検討されている「特別支援教育」制度において、障害児学校教員に対して、基礎となる小・中学校教諭免許状の取得と併せて、特別支援学校教諭免許状の資格取得を義務付ける方向が論議されていること、勤務校在籍児の指導ばかりでなく、地域の小・中学校に対する支援の役割を制度化することが検討されていることも考慮されなければならない。
 
 大阪府は、削減の理由を2点にわたって述べている。一つは盲・ろう・養護学校では「相当の教職員定数配置がなされていること」をあげている。しかしこれは大きな誤解である。
 子どもたちの障害の実態に応じた重複学級認可が行われていない実態は全国的に見られる。大阪でも実態に応じた重複学級認可の問題をめぐって、1991年3月大阪法務局人権擁護部に対して、重複障害学級の開設が極端に少ない実態を「健常児との教育行政上の差別、他都道府県での教育行政との差別」であるとして障害児の保護者4093人が人権侵害救済申立を行い、同年12月に大阪法務局より大阪府教育委員会への改善要望が出され一定の改善がはかられた。しかし、今なお子どもたちの実態に応じた教職員は配置されていない。
 
 障害児学校では子どもたちに応じた多様な教育課程が編成される。子どもたちの集団編制も多様である。しかし障害児学校の教職員定数配置はこの多様な教育課程編制を念頭において定められているわけではない。複数担任による授業、多様な学習グループによる個に対応した教科指導、給食や排泄の指導など、子どもたちによりよい教育を目指し、定数配置において想定される授業時数をはるかに超えて、教材準備を勤務時間外に行うなどの教職員の自主的努力によって障害児学校の教育活動は成り立っているのである。
 
 大阪府教委は第二の理由として、小・中学校の養護学級在籍児の教育は学校全体・教職員全体でとりくむので養護学級担当教員の特殊性は著しくはないことをあげている。
ここで注意しなければならないのは、この主張は現在進行する「特別支援教育」問題と本質を異にすることである。特別支援教育は、これまで特別な教育の対象から排除されてきた通常学級に在籍するLD児なども含め、児童生徒等一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導や必要な支援を目指すものである。障害児学校の存立と障害児学級の機能の存続は前提として議論されている。障害児学級担当教員に対して、担当児童・生徒のみならず、通常学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等の子どもたちの指導充実のためにも一層積極的な役割をもとめ、その有効で弾力的な活用について検討されている。これまで障害児学級に在籍している子どもたちに加え、全児童・生徒の6.3%程度(1校あたり20人程度)と想定される新たなLD児などの指導を充実させるためには、新たな教職員定数の配置が不可欠であると同時に、学校全体・教職員全体での協力体制、障害児学級担任の役割への一層の期待など、そのすべてが求められる大事業なのである。「特別支援教育」制度化の文脈の中では、大阪府の主張は意味を持たない。
 
 それでは、大阪府は何を目指しているのだろうか。「共に学び共に育つ」という教育理念をあえて前面にかかげることにより、障害児学級の役割と担任の職務の特殊性を否定するものであり、障害児学級を必要とする子どもたちへの教育保障を否定するものである。
 
 日本の教職員の、違法な長時間・過密労働の実態が年々拡大し、放置されている。全国の小・中学校に67万人も在籍すると想定されるLDなどの子どもたちをあらたに特別な教育対象として位置づけながら、教職員定数配置などの条件整備をしない教育行政は、学校現場の負担を限りなく増やしている。今、求められるのは調整額の廃止などではない。日本の教職員が心身共に健康に働けるだけの教職員の配置と、困難な職務実態に応じた賃金・労働条件の改善こそ行政当局のなすべき仕事である。
 
 今回の攻撃は、構造改革そのものである。公務員賃金削減と、安上がりな「特別支援教育」推進を背景とするこの攻撃は、今後一気に全国に波及する危険をもっている。すでに東京都や、島根県など、さまざまな形で障害児学校等調整額問題が話題にのぼっている。全国特殊学級設置校長会は特別支援教育に関連して調整額の廃止を求める意見を表明している。
 
 県や学校・学級の種別により異なるが、およそ月額3万円、一時金にも、退職金にも、年金にも波及する調整額の廃止は、障害児教育にかかわる教職員の生計に重大な影響を与えるばかりでなく、障害児教育の発展をも阻害するものである。
 
 全国の先陣を切って廃止を強行しようとする大阪の攻撃を許すことはできない。全教障教部は大阪の調整額廃止提案に反対し、撤回を要求し、たたかう。
 
 また、他県への波及を許さぬため、全国で障害児学校・学級の教育の大切さ・特殊性・独自性に対する確信を語り合うとりくみ、父母・国民とともにすべての子どもたちの豊かな発達保障をすすめるとりくみの前進のために全力をあげるものである。



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