【意見】2005/04/12
『「特殊教育免許の総合化について」(審議のまとめ)に関する意見』(中教審宛)
2005年 4月12日 全日本教職員組合 中央執行委員長 石元 巌
1.特別支援学校への転換と、免許状の総合化について
中教審「特別支援教育の在り方」(中間報告)では、盲・聾・養護学校を特別支援学校に転換することを打ち出すとともに、障害種別に応じた教育部門設置については国としての責任を明示せず、地方行政にゆだねる方向が示されました。私たちは、これまでの障害種別にもとづく教育の到達点を発展させる方向や、そのための条件整備が明らかにされぬまま、安易に統合がすすむことに反対しています。
今回審議されている免許状の総合化が、予算をかけない安易な「障害種別を超えた特別支援学校」化を促進させるものであってはならないと考えます。
特殊教育免許状の総合化をすすめるにあたっては、その前提として従来の障害種別に応じた教育の専門性を後退させぬよう最大限の努力を要望します。
2.特別支援学校教員免許とすることについて
日本の公教育において、障害児学校に学ぶ障害児はその一部にすぎません。従来の障害児教育の対象児においてもその多くは障害児学級に学んでいます。障害児教育の専門性にとって障害児学級を含む教員の専門性確保、採用、人事異動、研修保障の問題は喫緊の課題となっています。さらに昨今、障害児学校・学級在籍児に数倍する通常学級在籍児のことが問題になっています。日本の障害児教育は通常学級に在籍するLD等の子どもたちをも含め、一層の充実が求められています。
このような状況の中で、「審議のまとめ」が学校種に応じた「特別支援学校教諭免許状(仮称)」と構想していることには反対です。障害児学級や通級指導教室担当者をも視野に含めた「特別支援教育教諭免許状」とするなど、特別な教育を必要とする子どもたちの教育に求められる専門性を前進させるものに積極的に変えていくべきだと考えます。また「審議のまとめ」にも触れられているように、小・中学校等の教員養成カリキュラム全体の中で、障害児教育に関する内容・科目等が適切に位置づけられることを要望します。
3.免許状の種類・内容について
審議のまとめでは、普通免許状と臨時免許状の2種類を設けること、専修免許状・一種免許状・二種免許状を設けることが示されています。
今回の免許状の変更が、現在全国の障害児教育現場で急速にすすむ「臨時採用教員」の増大を補完するものであってはならないし、専修免許の内容として想定されている「指導的立場に立とうとする者が積極的に身に付けることを想定する」との発想は本末転倒であると考えます。「現職教員の自発的な研修を促すため」との論理が一人歩きし、免許状の違いが教員の身分・待遇の差と結びつき、研修の目的が変質してしまわぬよう最大限の配慮を求めます。
重度・重複児への対応、センター的機能の総合的コーディネートなどは、教員間の指導・被指導の関係や、身分的上下関係の下で推進されるべきではないと考えます。
4.現行特殊教育免許状所持者の対応について
特殊教育免許の総合化がすすめられる場合、現に盲・聾・養護学校教諭免許状を有する者の、新たな免許状取得については、「審議のまとめ」が指摘する「実務経験を新たな『特別支援学校教諭免許状(仮称)』の取得に生かす仕組みを設けることを検討」することが必要だと考えます。
教育実践上一定の講習などが必要になることも考えられますが、各学校を会場として開催するなど、障害児学校における教職員の深刻な人員不足の中で、教育実践と教職員の業務に過度の負担を与えぬ配慮をもって推進できる内容とし、条件を整えることを求めます。
5.障害児学校、障害児学級、通級指導教室の教員の採用・配置などについて
障害児教育を担う教員の養成が十分にすすむよう教育系大学の条件整備を求めます。障害児学校、障害児学級、通級指導教室にかかわる教員の採用や人事異動に関する抜本的な検討を求めます。障害児教育担当教員に研修を保障できるだけの教職員配置を求めます。
6.附則第16項の取り扱いについて
当分の間、特殊教育免許の保有を要しないこととしている教育職員免許法附則第16項を「時限を設けて廃止する」という問題については、全国各地で十分な認定講習等の開催が可能となる抜本的な体制整備がすすむよう、国が責任を持って条件整備をすすめることを求めます。
7.特殊教科免許状について
特殊教科の免許状は、障害児教育にとって重要な役割を果たしてきました。同時に障害児学校における障害を持つ教員の存在は、障害児の全人的教育にとって極めて効果的であるとともに、教育の分野で障害者雇用を推進する上でも重要な役割をはたしてきました。「審議のまとめ」にある、特殊教科免許状存続の方向に賛同します。
8.大学の指導体制における条件整備について
「審議のまとめ」では、「大学においてもすべての障害種別に関する科目を開設する体制を整える必要があるが、これは現実的に困難が予測される」とし、単位互換制度その他について言及しています。しかし教員養成は個々バラバラな知識の集積としてなされるべきではなく、総合的に企画・推進されるべきものであり、そのための条件整備が目指されなければなりません。
体制整備が困難と安易に決めつけるのではなく、国として責任を持って計画的に拡充していく方向で検討されることを求めます。
9.得に必要な科目と単位数について
案として示された「必要な科目と最低取得単位数」では、「特別支援教育の基礎理論及び教育課程総論に関する科目」が、2単位とされています。これは、現行教育職員免許法施行規則第7条の、第一欄「教育の基礎理論に関する科目」(4単位)に対応し、さらに教育課程総論を加えたものと思われます。障害児教育にとって、人権と障害者権利保障の歴史、その下での障害児教育の歴史、国際的な人権保障の前進にかかわる諸動向、学校の役割など、教育の基礎理論に関する科目は極めて重要な位置を占めていると考えます。これを2単位へと削減することはふさわしくありません。
案では「教育課程各論及び指導法」が9単位とされています。そして九つの障害種別の指導が列記されています。「教育課程及び指導法の内容」を、各障害種別の「指導法」として、1種別1単位の構成が効果的であるとは考えられません。各障害種の問題は、「心理、生理及び病理」の中で、子ども理解の課題としてより重視すべきであると考えます。さまざまな障害を理解しつつ、子どもの発達と人格の完成をめざす教員の育成という観点から再考を求めます。
以上
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