【談話】2006/03/09
『学校教育法等一部「改正」法案について』
2006年 3月 9日 全日本教職員組合 障教部部長 杉浦 洋一
1.政府は3月7日、学校教育法等一部「改正」法案を閣議決定し、国会に上程した。この法案は来年度予算案確定後、参議院先議で審議がすすめられる扱いがすでに確定している。
2.盲学校、聾学校、養護学校の制度から、特別支援学校の制度に改変することを中心的な課題とするこの法案は、学校教育法だけでなく教育職員免許法、公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律(以下「標準法」)、公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準に関する法律(以下「高校標準法」)をはじめ、合計52本に上る関連法律を一括審議し、一括採択するもので、2007年4月1日から施行するとされている。
3.この法案は、教育予算削減、教職員定数削減など、教育をめぐる近年の動向の中で、教育条件の最低基準として機能している「標準法」「高校標準法」による最低基準(ナショナル・ミニマム)を引き下げる要素を含んでいる。半世紀にわたる父母と教職員のねがいに基づく共同の運動で前進させてきた、日本の障害児教育の大幅な後退に道を開く要素を持つものである。
4.全教は、障害児教育関係者のみならず、子どもたちの教育に関心をよせるすべての人々に、この法案の検討・国民的論議を呼びかけるとともに、法案の修正を要求するものである。
5.標準法及び高校標準法「改正」案では、盲学校を「視覚障害者である児童又は生徒に対する教育を主として行う特別支援学校」、知的障害者である児童又は生徒を教育する養護学校を「知的障害者である児童又は生徒に対する教育を主として行う特別支援学校」などと、教職員の定数の標準を算定する学校の区分を定めている。これは、障害種別を超え、かつ地域の小・中学校の支援などを含むセンター的機能を有する特別支援学校の制度に対応した規定である。しかし、以下、少なくとも2点の重大な項目が除外されている。
6.第1は、複数以上の障害種別に応じた特別支援学校として設置する場合の、障害種に応じた専門的教育や、特別な教育課程を実施するための教職員定数に関する規定がまったく設けられていないことである。障害種別を超えた子どもたちの入学をすすめても対応する教職員は増やすことができず、さらに障害種別の異なる学校を統廃合した場合には、大幅な教職員定数の削減が生み出されることになる。これまでの教育水準を確保しようとすれば、地方自治体の財政負担が要請されることとなる。地方財政の現状を見た時、障害児教育の大きな地方格差が広がることが懸念される。
7.第2に、特別支援学校に課せられる新たな機能としてのセンター的機能に対応する教職員定数に関する規定がまったく設けられていないことである。すでに「特別支援教育」をすすめるとして、在籍児を指導すべき教員の2割前後を子どもたちから切り離し、「地域支援」その他の役割にあてている学校がいくつもの都府県で見られる。保護者の当番による教育支援が復活された学校さえ見られる。定数上の規定を欠く、新たな機能の追加は、直接的に在籍児の教育機能の後退につながらざるを得ない。
8.学校教育法「改正」案では、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び幼稚園の機能として、「文部大臣の定めるところにより、障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うものとする」との規定が加えられた。しかし、標準法及び高校標準法「改正」案では、新たにLD等の障害児をも対象として加える通級指導教室の「教室定数編制基準」及び担当教員の配置基準は、強く要望されていたにもかかわらず定められなかった。コーディネーター定数をはじめ、小・中学校に対する教職員定数の基準に関する規定も何ら設けられていない。小・中学校だけでも全在籍児童・生徒の約6%、67万人とも推計されるLDなどの子どもたちの教育を前進させる国の責任・姿勢に対し怒りを禁じえない。
9.これまでの特殊学級は、特別支援学級と名称を変更し、前項で引用した、小学校等に対するあらたな機能規定の中に組み込まれることになる。これまでの、生活・集団・行事をも含み、障害児の全人的発達を保障してきた障害児学級の機能が、「オプションとしての」障害児教育に後退させられることがないか、さらに解明・検討が求められる。
10.予定される法案審議までの時間が限られています。障害のある子どもたちの教育に心を寄せるすべての人々に、法案に対する検討を呼びかけます。
11.障害児にかかわるすべての全教組合員が、緊急に法案の検討・討議をすすめ、父母との対話や各学校における討議を深めるとともに、校長先生、障害者団体、父母組織、教育委員会、地元選出国会議員をはじめ地方議会議員、マスコミ関係者などとの懇談をすすめ、障害児教育の未来に禍根を残すことの無いよう、全力でとりくむことを訴えます。
以上
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