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全教のとりくみ詳細
【ILO】2008/09/01
『1966年及び1997年の教員に関する勧告不遵守に係る教員団体からの申し立てについての中間報告(インテリムレポート)』 3
はじめに

経緯

その後の展開

所見(3~16)
添付ファイルなし

所見(17~32)

業績評価と給与決定 
 
17.全教の最初の申し立てとその後に提供された情報は、政府と都道府県教委が教員評価制度を、教員の高度な職務遂行に報いるための昇給や賞与(勤勉手当)と連動する業績評価制度へと徐々に変化させていること、この業績評価制度が教員の同僚性と個々の専門性を損なうもので、客観的でなく、適切な手続き的保障に支えられているものではないこと、そして何よりも教員団体との有効な協議の対象とされず、教員団体によって同意されたものではないという主張をしていた。政府はこの間、既存の評価制度は給与や労働条件を決定するための業績評価制度ではなく、より良い学習の実現を目的として教員の技術の開発と改善のために設けられた制度であると主張してきた。さらに政府によれば、評価や授業観察を行う管理職の訓練が行われているので、評価は正当で客観的である。評価結果は個人面接で教員にも知らされ、不服申し立ての手続きも保障されている。この制度の開発において教員の意見は取り入れたが、日本の法律はこれを管理運営事項にあたる問題としているため、教員団体との交渉は必要ないと主張した。
 
18.調査団報告を検討するにあたり、共同専門家委員会は1966年勧告が生徒、父母、その他雇用者など関係者の、質の高い教育に対する要求に応える教育当局の責任を否定していないことに留意する。その意味で、1966年勧告は、最適の教育サービスを組織しなくてはならない教育当局が、社会の変化に由来する課題と責任を有することを明らかに認めている。教員の能力に関してすでに述べたように、教員評価はそのような責任の一環である。さらに共同専門家委員会は、本件に関する2003年報告において、1966年勧告は雇用当局が給与決定の基礎となる公正な業績評価制度を開発し、実施することを認めている。しかし同時に1966年勧告の示す専門職の授業と有効な学習の原則は、高度な訓練を受けた専門職としての教員の学問的自由、判断、創意、責任(academic freedom, judgement, initiative and responsivility)を強調している。このため1966年勧告によれば、教員の視学や監督は、教員が職務遂行の質を高めることを支援し、その自由、創意、責任に反して働くことのないように設計されなくてはならない。
 
19.調査団は、日本では評価した業績に基づいて数量的な報償を与えるため、数量的な目標や基準を中心に教員評価制度を構築する傾向が強まっていることを確認した。これらは1966年勧告が求めている十分な養成を受け、意欲のある教員の専門職としての自由と責任、それらを衰退させる可能性がある。共同専門家委員会は、業績評価制度に対する教員の態度について、調査団の所見と同意見である。多くの教員は教員評価と金銭的な報償とを関連させることにほとんど利益はなく、批判すべき点が多いと考えている。報償は僅かであり、職務遂行への影響もよくみても功罪相半ばという程度である。これはより注意深い再検討を必要とする、憂慮すべき傾向である。例えば教員の受け止め方についての詳細な調査を行い、その結果の教職及び教育関係者全員の共有に基づいて、そのような再検討が行われる必要がある。この問題のより広範な調査の結果によっては、1966年勧告で求めている個々の教員の専門職性と当局が公式に設定した基準との間の均衡を図るために、政策の方向転換が適切であるということもありうる。この点に関連して、共同専門家委員会はILO やOECDなどの国際機関の調査が、近年、業績給がチームワークや学校の運営に対して悪影響を及ぼしていることを示しており、個人別の業績給は教員を教職に引き付け、定着させるという点からは正当化できないと結論していると2006年報告で述べていることを想起する。
 
20.調査団の調査結果に基づき、共同専門家委員会は、2002年に初めて申し立てがなされて以降、教員評価の手続きとその運用に改善がみられたことに同意する。この改善には教員に評価結果がより広く開示されるようになったこと、報酬に影響を及ぼす良好以下の評価を受けた教員のための不服申し立て手続きが明確化されたことなどが含まれる。これらの改善は一部の県で運用されている業績評価制度の透明性を高め、主観性を低めることによって、1966年勧告の主要な規定により良く応えるものになっている。当局はこのような過程の改善措置を講じたことについて称賛されるべきである。
 
21.しかし、多くの課題がまだ対処されないまま残っている。それには以下のようなものが含まれる。
― 少なからぬ数の評価の妥当性について、教員と校長が批判を表明している
― 規模の大きな学校やより複雑な学習環境(特に特殊教育)において、校長や教頭が評価を行うのは困難である
― 女性教員が多数であるにも関わらず、その時間的制約に対する配慮が明らかに不足している
― 雇用当局が成績上位者の比率を制限しているために、評価が相対的な性質になっている
 
 共同専門家委員会は、1966年勧告の規定に則って業績評価の手続きと基準を可能な限り客観的、透明、公平なものにするためには、まだ改善の余地が多く残っていることを確認する。
 
22.1966年勧告が業績評価について教員団体との協議や、教員団体の合意が必要であるとしていることに関して、共同専門家委員会はこの制度の決定過程が明らかに1966年勧告に違反しているとした調査団の所見に留意し、それを確認する。したがって、以前の共同専門家委員会の報告で挙げられている理由から、この過程は改められなければならない。この線に沿ったより具体的な勧告は、以下の協議と交渉に関する部分で行っている。雇用当局と教員団体との適切な協議があれば、教員団体によって代表される教員専門職の側の業績評価制度受容につながるが、そのような協議がなければ、1966年勧告の主要な規定が日本で遵守されているとは言えない。このような条件においては、より良い学習のための業績評価という究極的な目標は十分に達成され得ないだろう。
 

協議と交渉

23.最初の申し立てで提起された協議と交渉(社会的対話)の問題は、当該雇用当局と教員を代表する教員団体との間に適切な協議あるいは交渉が不足しているというものであった。共同専門家委員会は2006年報告で、都道府県レベルでいくらかのささやかな前進があったものの、2002年に初めて指摘された問題をめぐって、雇用当局との間で行われた対話はなお限定的であったという全教の主張に留意した。大阪に本部があるなかまユニオン学校教職員支部も大阪府の新しい評価制度導入に関する適切な対話が不足していたと主張した。2006年報告は同様に、全教との間でしかるべき問題についての対話は行われており、さらに共同専門家委員会の2005年中間報告とこれらの問題に対する文科省の立場に関する情報を、都道府県教委へ提供しているという政府(国及び県当局を代表した文科省)の見解も検討した。同時に政府は、教員の指導力不足と業績評価の問題は、本質的に地方当局の管理事項であり、実際に新しく提案された基準についての協議は広く行われているものの、それらの問題について教委が教員団体(労組)と対話をする義務はないという以前の主張をくり返した。上述のように、政府は、日本の法律はこれらの問題を、教員団体との交渉を除外する管理運営事項の定義の範疇に入るものと位置づけていると一貫して主張してきた。
 
24.調査団報告を検討するにあたり、共同専門家委員会は、1966年勧告が教育政策決定において権限をもつ当局と教員団体の間で問題の性質に応じて行われる協議や交渉が重要であり、それは教育制度全体の機能に積極的に貢献するとくり返し述べていることを想起する。教員団体のこのような役割は教育政策によって異なるかもしれないが、1966年勧告は「学校の組織、教育事業における新しい発展」などに関する協議を明らかに求めている。共同専門家委員会は、日本政府代表と教員団体からのオブザーバーが参加してパリで開催された教員の地位に関する特別政府間会議が、1966年10月5日に満場一致で採択した1966年勧告の背景にある原則は、そのような協議こそが改革の成功に不可欠であるというものであったと理解している。
 
25.共同専門家委員会は、調査団のさまざまな所見、特に日本の多くの当事者間にもたれている認識、すなわち協議(consultation)と交渉(negotiation)の概念(「交渉」は交渉の結果としての協定上の合意(a bargained agreement)につながり、「協議」はより流動的で必ずしも決定に至るものではない)は必ずしも質的に異なるものではないという認識を注意深く検討した。共同専門家委員会は、このことは日本の当事者が簡単な話し合いからより具体的な総意(consensus)づくりあるいは協定締結に至るまでの、いずれかの段階において、その性質を断定的に区別することなく、相互交渉を行っていることを意味するのではないかと考える。しかし、調査団がいみじくも指摘しているように、1966年勧告自体はこの区別をしている。さらに、共同専門家委員会は、2005年の中間報告ですでに勧告しているように、協議は「誠実に行われる継続的な話し合い」でなくてはならないと理解している。なぜなら勧告は、協議の過程から総意や協定が生じるかどうかに関わりなく、当事者は「協調の精神でその過程に臨むもの」としているからである。
 
26.このような検討に照らして、共同専門家委員会は政府(主として文科省)、そして都道府県教委と教員団体との間の協議過程はせいぜい形式的なものにとどまっていることを確認する。調査団の所見にもとづけば、協議の過程は、分権化された教育制度について予測できるように、都道府県ごとにある程度異なっている。一部の事例では、手続きは制度的といよりは個人的なつながりに依拠しており、教員団体と交換する情報量も異なっている。しかし一般的には、雇用当局は、しばしば、自分の役割を、すべての教育関係者に開かれた公開の意見聴取という大枠のもとで、可能な場合には意見や質問に応対することにとどまるものと考え、教員団体との関係をより緊密にして、対話から良い結果を生み出そうとするところまで拡大して考えてはいなかった。国及び都道府県レベルの教育当局は、提案されている政策やすでに下された決定が協議の結果変更されるか否かに関わらず、教員団体の意見を聞くだけで十分であると考えている。雇用当局の側には、教員団体の意見を踏まえて、自分たちが教員評価の政策を変更すべきだという考えはほとんどない。しかしながら、1966年勧告は、単なる開かれたあるいは教員の意見を聞くだけに限られる教員団体との会談、それより多くのものを内容とする協議過程を要求している。
 
27.「指導力不足」と判定される教員を対象とする評価制度を、都道府県教育委がより公平に運用することを助けるために文科省が作成したガイドラインは、それが47都道府県における制度運用の一貫性を強化するという意味で、教員評価制度の重要な前進である。しかし一方で、協議と交渉に関する1966年勧告の規定が、このガイドラインの開発と適用においても考慮されたという証拠はほとんどない。
 
28.現在までに共同専門家委員会と調査団に提出された証拠資料は、社会的対話の過程が日本の公務員法制とその解釈によって限定されていることを示している。この法律上の障壁と入手した証拠資料を考慮して、共同専門家委員会は、地方教委が教員評価の政策、基準、手続きについて交渉しなかっただけではなく、1966年勧告がこの問題について想定しているように協調の精神をもって教員団体との協議に臨むという義務は、明らかに達成されていないことに留意する。このことは当該評価制度が十分な指導力のない教員を判定するものであるにせよ、あるいはより一般的な業績評価制度の一環であるにせよ、妥当する。共同専門家委員会は、すでに以前にも確認したように、このように協議を怠ることは、1966年勧告の文言にも精神にも反するものであると考える。
 
29.共同専門家委員会は、「教育当局と教員団体との協議や意見交換のための確立された機構」が存在する証拠資料を調査団が発見しなかったことに留意する。協議が行われていたとしても、制度的形式によるものであることはまれである。確立された協議機構が一般に欠けていることは、当事者間の著しい誤解をもたらし、共同専門家委員会の検討に付されている本件のこれまでの全経過をつうじて、雇用当局と教員団体とがしばしば正反対の意見をもっていたことの説明にもなる。当事者は社会的対話の過程を相互に期待していないので、実際に行われた話し合いの結果について、彼らの見解が分かれるのも驚くべきことではなかった。
 
30.教員の給与その他の勤務条件に影響する業績評価制度の結果は、明らかに交渉の対象とされる問題に含まれるにも関わらず、共同専門家委員会は、一方における教員団体との協議の範疇外の管理事項とみなされる問題や、他方における1966年勧告にしたがえば交渉の対象となりえる勤務条件の問題について、当事者間に継続して著しい意見の隔たりがあることに留意する。雇用当局は調査団に対して公務員法の存在に言及したが、他の分野においても公務労働においてこの法律適用が支持されている事例や証拠は示さなかった。教員団体は、日本の法律では、雇用者には文書による団体協定(collective agreements)をする交渉権限がないことを認めていたものの、このような限定を受け入れていることを示さなかった。共同専門家委員会は教員の給与や労働条件についての交渉に適用される1966年勧告の関連条項は、ILOの団体交渉の諸原則に基づくものであることに留意し、この点に関して権限のあるILO機関の意見に従うものである。※ 
 
※ 次の報告を特に参照:1948年結社の自由及び団結権の保護に関する条約(87号)と、1949年の団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約(98号)とについて、2008年に公表されたILO条約勧告適用専門家委員会の個別報告。ILO理事会結社の自由委員会の事案2177、2183の350回報告、340回報告と事案2114の328回報告。 
 
31.共同専門家委員会は、以上のような所見から、1966年勧告が想定する協議・交渉の手続きは日本においては限定的かつ不完全にしか機能しておらず、特に教員評価制度について、また一般的にも教育政策や1966年勧告でふれられている専門職としての他の側面について、教員団体側に不満と疎外感が広がっていると結論する。これは全国レベルでも、各県レベルでも同じである。教員評価の過程において教員団体が重要な役割を担っていないことが、特に、教員集団のみるところでは、その過程の透明性や正当性に対する悪影響を及ぼしている。さらに、女性が教員の多数であるにも関わらず、社会的対話・意見交換の場面において、とりわけ教員評価制度に関する政策やガイダンスの決定において、あらゆるレベルで両方の側(政府、教員団体)に女性の代表がきわめて少ないという事実が、そうした不満に輪をかけていることを示す証拠がある。共同専門家委員会は、これは自分たちの仕事と職業に関して行われる話し合いや対話の場における女性教員の不在を示すだけでなく、1966年勧告の7項に反する、未対処の差別形態の証左であるという調査団の所見に同意する。
 
32.このことの実質的影響は、協調の基礎となる協議と交渉という基本原則の適用を損ない、日本の教育の有意味性・レリバンス(relevance)と質の向上とを図る教育改革が成功する可能性を損なうことである。
 

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勧告

教員評価、指導力、懲戒的措置

業績評価

交渉と協議


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