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4.教育財政最優先の展望
 義務教育費国庫負担を含む教育財政のあり方は、地方「構造改革」の数合わせの手段ではなく、日本の教育改革や経済財政再生の要として、長期的・巨視的・総合的観点から検討する必要がある。
 日本の長年の教育費冷遇政策は、いまや教育にとどまらず、社会のあらゆる分野の停滞・疲弊の要因となり、将来の発展を阻害している。例えば、法外に高い教育費負担が、極端な少子化、労働・消費人口の急減などをもたらすなど、今日の経済財政の停滞、破綻も過去の教育政策の失敗によるところが大きく、この延長で教育を「構造改革」の餌食にし、未来を食いつぶすことは失政の上塗りであり、許されるべきではない。
 前述の通り、日本の公教育費の切り下げは国際的にも異常であり、公教育費の対GDP比3.5%(OECD諸国平均4.8%の7割)水準への低落に問題が集約されている。その差の1.3%を引き上げるならば、それは2004年度で約6.5兆円、フランス並み5.7%なら2.2%の引き上げとなり、11.0兆円の増額となる。2004年度の文科省所管予算が6.1兆円であるから、それに匹敵、または倍近い増額になる。それにより、欧米並み教育条件整備ー少人数学級(30人学級約1.2兆円)、大学教育無償化(約1.5兆円)等ーへの接近がようやく可能となる。
 いま、世界の主要国や国連機関は、21世紀を「知識中心の社会」と展望し、「教育最優先」を旗印に、公教育費増額を基本とする教育改革がすすめ、提起している。イギリス労働党が、1997年、2001年に選挙綱領に「教育最優先」(the top priority)を掲げて圧勝したことはその象徴であろう。【2005年5月総選挙向けマニフェストでは1997〜2007年の教育投資平均4.8%引き上げの方針、10年間50%以上の増額】米国のブッシュ共和党政権でさえ、「ひとりの子どもも落ちこぼさない」(no child left behind)のスローガンのもとに、教育改革法を成立させ、政権発足以来、2003年までに連邦教育予算を43%増額させている。
 経済の発展にとっても日本の教育軽視は異常、非常識であるが、いうまでもなく、教育は、単なる経済発展の道具ではない。それは、すべての人々の生涯にわたる人間的発達のための基本的人権であり、社会にとっては21世紀の人類的課題ー平和、人権、民主主義、持続的発展ーなどを達成するための最優先課題と認識されている(1998年10月、160カ国の政府代表の会議が採択したユネスコ「21世紀にむけての高等教育世界宣言ー展望と行動ー」)。
 このような視点から、教育を冷遇する「構造改革」を転換させ、財政窮迫のもとでも教育費の欧米並水準をめざし、その飛躍的増額を図る必要がある。厳しい財政事情のもとで、各分野で削減反対・支出増額の要求が強いのは当然であり、失政のしわよせは重大・深刻な状況にあるが、さればこそ、あらゆる分野の発展の源泉である教育費を最優先し、未来世代を育み、将来に備え希望をつなぐことは、日本の再生、起死回生を賭けた政治選択の課題として認識されるべきである(7)。

5.教育条件整備運動の視点と課題
(1)教育条件整備運動の意義
 教育基本法10条の具体化、地域における教職員の役割
(2)教育条件整備運動の視点
〔1〕「教育的価値」としての教育条件の認識
〔2〕積極的な政策提起
〔3〕父母・住民との共同
〔4〕現行制度への精通と活用
〔5〕子ども・父母・国民の要求の実現
〔6〕教育内容・活動との結合
〔7〕教育の規模・環境の重視
〔8〕教育の無償の実現
〔9〕教育条件としての勤務条件の確立
〔10〕教育財政の現状認識と展望


【注】
1)主要国の教育財政制度の根幹、義務教育の教員給与の負担主体は、国(フランス、韓国)、国と県(日本、イギリス〔国が拡大の方向〕)、州・県(アメリカ;州〔国=連邦が拡大傾向〕、ドイツ;州、ロシア;連邦構成主体、中国;県〔国が拡大の方向〕)(文部省『諸外国の教育行財政制度』大蔵省印刷局、2000年6月、その他)。
2)義務教育費国庫負担制度見直しの動向と戦前からの沿革の大要については三輪「教育費国庫負担の歴史ー改変動向と存続の意義ー」『クレスコ』2002年11月号を参照。大正・昭和期の義務教育費国庫負担制度史の研究については井深雄二『近代日本教育費政策史』( 草書房、2004年2月)が詳しい(三輪同著書評『経済』2004年12月号)。
3)教職員団体・教育学者の意見は、例えば、三輪ほか「義務教育費国庫負担制度の堅持を求めるアピール」(2004年4月27日。市町村教委521自治体、教育学者100名が同年11月までに賛同し意見記述)、『教職研修』2004年9月号の「特集・義務教育費国庫負担はどうあるべきか」の各論稿など参照。自治体の意見は、「日本の教育を考える10人委員会」(委員長・佐和隆光京都大学経済研究所長)のアンケート調査(2004年4月)では、1109自治体(回答率35%)のうち義務教育費国庫負担金の一般財源化について「賛成する」4%、「反対する」90%であった。新聞広告では、例えば、小柴昌俊(ノーベル賞受賞者、東大名誉教授)らによる「いま、日本が危ない!」「読売新聞」2004年10月28日などが発表された。反対集会は、2004年11月5日に全教等、同月18日に教育関係22団体、その他の集会が開催された。
4)三輪「30人学級早期実現の必要とその展望」『クレスコ』2001年9月号、「少人数学級で子どもたちに学ぶ権利を」『クレスコ』2003年10月号。
5)同答申の考察については、三輪「中教審答申と今後の教育行政」『障害者問題研究』27巻2号(1999年8月)を参照。
6)同報告の考察については、三輪「『今後の学級編制及び教職員配置について』の問題点と課題」『ほんりゅう』2000年8月号、三輪「教職員の在り方に関する協力者会議の報告を斬る」『高校のひろば』37巻(2000年8月)参照)。
7)ジョン・ガルブレイス(1908年生まれの元ハーバード大学教授、米経済学会会長、ルーズベルト、ケネディ大統領の顧問も勤めた経済学の大御所、知日派の学者)は、近著、『日本経済への最後の警告』(角田隆訳、徳間書店、2002年8月)の終章(7章)の「日本経済の未来」「日本のリーダーに求めるもの」でこうのべている。ー「いま日本政府が公的資金を投入すべき最大のターゲット」は『社会的インフラストラクチャー』(経済基盤)であり、それは『教育』面でなければならない。いまや世界は人材開発競争の時代にはいっており、こうした面で立ち遅れては、国家としての将来展望などは全く開けなくなってしまうからである。」 それは、日本の経済政策への的確な警告であろう。


全教作成「2005年4月少人数学級を実施している自治体」

北海道
小1・2:35人(1学年2学級以上校)
高の一部:30人編成
青森
小1・2:33人
中1:33人以下
高一部:35人以下
秋田
小1・2と中1:30人程度
高の一部:35人募集
岩手
小1〜中3:概ね35人
33校で少人数学級試行
宮城
小1・2:35人
中2から中3への進級時に学級減を行わない。
山形
小1〜6:33人以下
中1:33人以下
島根
小1・2:30人以下
新潟
小1・2:32人以下
福島
小・中全て:33人以下(小1・2、中1は30人以下)
山口
小1一部:35人学級
中1〜3:35人
高の一部:35人募集
富山
小1・2:35人
高の一部:30人
栃木
中全学年:35人
小1・2:36人以上に非常勤講師配置
徳島
小1・2:35人以下
福井
中1:30人
小6と中2・3:39人(19年度めどに)
高:年次計画で35人
茨城
小1・2:一部で35人以下
愛媛
小1〜3と中1〜3:一部で35人程度
石川
小1・2:35人(希望する学校で)
群馬
小1・2:30人以下
高知
小1・2:30人
中1・中2:研究指定校3校
で30人学級
高の一部:35人以下
滋賀
小1・中1:35人
埼玉
小1・2:35人
中1:38人
高1〜3:少人数学級展開65校
福岡
小1・2:35人(加配の振替で研究)
京都
特に必要と認めた場合、少人数授業か学級を選択
京都市
小1・2:35人以下
千葉
小1・2:38人以下
中1:38人
佐賀
小1・2で少人数またはTTの選択
中1の数学と英語でTT
奈良
特に必要と認める学校で実施
神奈川
小1:希望する学校で35人、研究指定校制
小2:04年度指定校のみで
長崎
小1・中1:30人前後(研究指定校の12校で)
大阪
小1・2:38人
岐阜
小1:35人以下(1学年2学級以上校)
熊本
小1:35人以下
和歌山
小1〜4:一部35・38人程度
中1・2:一部35人
山梨
小1・2:30人
大分
小1:30人の20人下限
兵庫
小1:35人(希望する学校・市町)
静岡
中1:35人(3学級以上)
不登校生徒受入高校35人
宮崎
小1・2:30人以下
岡山
小6:35人以下
中1〜3:一部35人以下
高校一部:35人以下
愛知
小1:35人(研究指定で)
名古屋市
小1・小2の一部:30人以下
鹿児島
小1:35人
小2:35人
広島
小1・2:35人以下
三重
小1・2:30人(下限25人)
中1:35人(下限25人)
沖縄
小1・2:35人以下
鳥取
小1・2:30人
中1でも一部33人(地教委の希望で)
長野
小1〜6:30人規模

◆東京・香川を除く45道府県が、これまでに少人数学級を実施しています。
◆5月に文科省が小学校1・2年で35人学級実施の方針を固めたという新聞報道がありましたが、すでに小学校1・2年両方で35人(以下)学級を実施している道府県は27、政令市は1(地図参照)となっています。
◆少人数学級を実施している道府県で特に先進的といえるのは、山形と福島の事例です。山形は「さんさんプラン」の名称で、小学校1〜6年と中学校1年で33人以下学級を実施しており、福島ではこの春から小中学校すべてで少人数学級が実現しました。

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